「そこの階段上がったら幹部室」
''多分、そこにいる''
最後まで、柔く響いた冬哉くんの言葉に背中を押されるみたいに、階段を蹴りあげていく。
そして、ふう、と深呼吸をひとつ。
────ねえ律くん。聞きたいこと、たくさんあるんだよ
冬哉くんが渡してくれた鍵を差し込むと、がちゃ、と音を立てる。
そのまま、ゆっくりと、ドアを開いた。
「─────っ、律くん」
入ってすぐに飛び込んできた、艶のある黒髪。
思わず呟けば、びくっと肩を震わせた律くんが、ゆっくりと顔を上げた。
「みお、」
「っ、うん」
瞳がぶつかって、ドク、と脈打つ。
心地いい低音が、じんわりと溶けていくみたいな感覚なのに、心臓は震えてる。
「....ふ、髪ボサボサ」
「え、うそ....!」
くしゃりと頭の上を撫でられて、手がそのまま下に降りていく────と
「.......、は」
ぼんやりしていた律くんの瞳が、カッと開かれた。
まるで、''あるはずのないものに触れた''みたいなリアクション。



