冬哉くんの問いかけに、男のひとは無言を貫く。


下を向いたまま、動かない。


......と、次の瞬間。


「っくそ、正義のヒーローぶってんじゃねぇよ......っ!」



冬哉くんが足の力を緩めた一瞬で起き上がった男が、私の方へと向かってくる。



───そういう顔を向けられるのは、苦手だ


嫌悪にまみれた瞳を向けられて、胸のあたりが鈍く痛んで、苦しくなる。


無意識に、ぎゅっと目を瞑ると。



「そいつにさわんな。......汚れる」



庇うように後ろに回されて、見えていたものぜんぶが、冬哉くんの背中で覆われた。




「カッ....ぅ、ぐ」


「....ダサ」


隙間から見えた、フォームの綺麗な完璧な回し蹴り。



「(冬哉くん、すごい.....、)」


ものすごい勢いで吹っ飛んでいく男のひと。


蹴りがみぞうちに入ったのか、倒れこんだまま起き上がれない様子。