「冬哉くん?きこえてる?」


「.....や、おまえが気づいてると思わなかった」


「そ、そんなにびっくりした顔しなくても....!」


「あほで抜けてんのに、こーゆーのは鋭いんだな」



片方の口角をあげて、わざとらしく首を傾げる。


.....と、そのまま腰に腕を回されて、ぐい、と引き寄せられて。


密着する身体に、ぶわっと顔が熱くなる。



「っな、なに.....!?」


「口と閉じてろ、ばれる。....あと、後ろはぜったい見るな。繁華街出たとこの角で曲がる」


「.....うん、わかった」


荒ぶる私とは対に、落ち着いた様子の冬哉くん。


こういうことに、慣れてる.....とか?


冬哉くんのことだから、なにか考えがあるのだと思うけど。



────そして、角に差し掛かったとき



私と冬哉くんが、路地裏に息をひそめるように隠れた、10秒くらい後。


焦ったような吐息のあと、うめき声のようなものが聞こえて。