「っ、は、」



5秒、息止まった。


どんな状況だよ、これ.....。


視線を下げれば、穏やかな吐息を立てながら、すやすやと眠っている未桜。



『りん』じゃなくて、『律』


未桜は、寝言で俺の名前を呼んでた....?



それに加えて、この体勢はなに。


無意識に男に抱きつくとか、警戒心どこに置いてきたんだよ、あほ。


警戒心ゼロ越えて、マイナスだよおまえ。


小悪魔とかカワイイもんじゃない、ここまでくると悪魔の領域。



なんて、心の中で毒づいてみても、顔の熱はなかなか引かない。



試しに、腕を解いてみようと力を入れると。


「やっ、」



離さない、といわんばかりに強く引き寄せられる。


こいつ、俺のこと抱きマクラかなにかと思ってる?


穏やかな寝顔、幸せそうに眠る未桜のことを引き離せるわけもなく。


....ほんと、かわいーな。



「....ん、降参」



そのまま身体を横に倒して、ベッドにふたりで並ぶ。


小さな背中に腕を回して、腕のなかに閉じ込めた。



密着する身体、無防備な寝顔、鼻を掠める甘い香り。



「(今夜は、寝れねーな)」



目を瞑る、その瞬間に。


幸せな夜だと思った。