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「おぼえてねーよな、おまえは」
あの日、屋上で未桜を見つけたとき。
『蒼唯未桜、です』
二年前と変わらない、柔らかい声色で告げられたその一言。
真っ直ぐと俺を見上げる無垢な瞳が────どれだけ眩しくて、あたたかくて、それが俺にとってどれだけ嬉しかったか、おまえは知らない。
「みお、」
このあたたかい響きを、今だに信じられなくなる時がある。
ずっと探していた彼女が隣にいるなんて、夢みたいなハナシで。
『律くん』
けど、やさしく名前を紡がれる度に、夢じゃなくて現実なのだと、実感させてくれる。
「ふふ.....っ、り、ん、」
「またそれ、」
口許を綻ばせながら、意味のわからない言葉を溢す未桜。
....それすら可愛く見えるんだから、もう、とっくに手遅れなんだと思う。
頭に手のひらを置いて、やさしく撫でれば、びく、と反応する身体。
起こした?.....と顔を覗き込めば、未桜はうっすらと目を開いて。
「り、....ん、りつくん、律くん.....っ」
へにゃっと気の抜けた笑顔をこぼすと、───────腕を伸ばして、絡めた。
腰に回された腕に、ぎゅう、と抱きしめられる。