『あと、これ。ずっと握りしめていましたよ』
手のひらに置かれたのは、真っ白なハンカチ。
縁には、紫の糸で【M‚A】と刺繍されている。
『これ....』
カイロと一緒に貸してくれたもの。
ポケットを探れば、冷めきったカイロが入っていた。
彼女の────あおいの、唯一の手がかり
無意識に、カイロとハンカチを握りめる。
「会いてえな、」
もう一度、会いたい。
あたたかくて、穏やかで、真っ白な彼女に。
今度こそ、ほんとうのおまえの表情がみたい。
溢れてくるのは、そんな感情ばかり。
「はあ....」
「ため息なんてつかれて、大丈夫ですか?」
晴の声が右から左に抜けていく。
名前しかわからないし、年も住んでる場所も知らない。
見つかる可能性は壊滅的に低いのはわかってる。
────けど
「....ったい、」
「はい?たい?」
「絶対、見つける」
俺にとっての、たったひとつの思い出は、たったひとつの誓いになった。
その願いが叶うのは、それから2年後のハナシ。