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「さすが桜雅グループご長男。ほんとうに素晴らしい」
「いえ。ありがとうございます」
いつの間にか、身に付いていた愛想笑い。
呪文のように同じセリフを並べながら、軽く頭を下げれば、相手は満足したように笑いながら立ち去っていった。
──''桜雅グループ長男''
自分を構成するのは、それだけだった。
『桜雅くんって、なんでもできてすごいよ
ね~』
『でも、ママに桜雅くんとはあんまり関わらないでって言われたよ?──お家が社長さんだから、怖いんだって』
学年が上がるにつれて、よそよそしくなる周りからの態度、寄せられる好奇の視線。
同級生はみんな俺の''桜雅''という名前に遠慮して、必要以上に話しかけられたこともなかった。
『そういえば、桜雅くんが先生に怒られたところ見たことないや』
『そりゃそうだよ~。桜雅くんは、特別だもん』
──やめろ
そんなトクベツ、俺はいらない、望んでない



