ため息をつきながらくしゃりと髪を掻いていると、由良がなにかを思い出したように顔を上げた。
「あれ、律。未桜ちゃんにドライヤーー渡しにいくって言ってなかったっけ?」
「....わすれてた」
棚にしまってあるドライヤーを持ち、二階への階段を上る。
未桜は髪長いし、必要だろ。
幹部室のドアの前まで来ると、一応のためにドアをノックする。
「入ってもいい?」
「うん、どうぞ....!」
高くも低くもない、どこか柔らかい声に誘われるように、部屋に入る。
真っ先に視界に入ったのは、ソファーに座りながら髪をふいている未桜の姿。
そんな彼女に、ドライヤーを渡そうとした、その瞬間。
「っ......、は」
────一瞬、息が止まった
は、という短い息の後、乾いた声が漏れる。
ふわりと顔を上げて、固まる俺を見ながら不思議そうに首を傾げている女は─────誰、だ



