「俺の、な」


頭上から甘ったるい低音がふってきて、視線を捉えられる。



「りつくん....、」


スタスタ、階段を降りてくる足音がする。


これは、律くんジョークってやつ....?


だって、よ、嫁、なんて....あり得ないにもほどがある。


軽い冗談、みたいな....真に受けたら、恥ずかしいことになる.....!


心のなかの動揺を悟られないように、唇をぎゅっと引き結んで、視線をそらす。



すると律くんは、私の目の前に屈んで、強制的に絡ませてくる。



....やっぱり、むり、かもしれない。



この瞳に捉えられると、自分のなかのセーブが効かなくなって、隠せない。


全てが見透かされているみたい。



「ほら、やっぱ」



耳にかかった髪をそっと手に絡められて、やさしくとかれる。


少しだけ引寄せられて、律くんの甘い香りが鼻を掠めて。



「っ....、」


「照れてんの、バレバレ」



からかうように囁かれた声と、どこか妖艶さを感じられるな笑み。



ドクン、心臓が浮く感覚なんて、知らない。


....こんなの、律くんが初めてだから、わからないの。



「未桜のぜんぶ、俺が貰うから.....っつーことで、俺の嫁な」



.....降参だ、って思った。