「それも、かなりの人数なんだって....。ってか、桜雷を覚えてない未桜の方がスゴいと思うけどね?」
ニヤッと口角をあげながら、そんなことを言ってくる悠莉。
「....だから、いっかいくらい聞いたことあるの、」
ふいっと視線をずらした、その時。
「.....!」
一瞬────ほんとうに一瞬だけど、桜雅くんと呼ばれる''彼''と、目があった気がした。
二秒ほど見つめあったかと思ったら、スッと逸らされた瞳。
────って、自惚れもいいことだ
あんなにかっこいい人とたまたま目が合うことなんてないでしょ....。
「どーしたの?未桜、ぼうっとして?」
「....ううん、なんでもないよ。行こっか」
心配そうにこちらを見る悠莉に、にこっと微笑み返す。
そして、私たちは、入学式が執り行われる体育館へと歩きだした。
◇
一瞬だけ、目が合った気がした、あの瞳は。
綺麗で、魅力的で、なによりも....あたたかくて、やさしい瞳だった。
◇