「それも、かなりの人数なんだって....。ってか、桜雷を覚えてない未桜の方がスゴいと思うけどね?」


ニヤッと口角をあげながら、そんなことを言ってくる悠莉。



「....だから、いっかいくらい聞いたことあるの、」


ふいっと視線をずらした、その時。



「.....!」


一瞬────ほんとうに一瞬だけど、桜雅くんと呼ばれる''彼''と、目があった気がした。


二秒ほど見つめあったかと思ったら、スッと逸らされた瞳。


────って、自惚れもいいことだ


あんなにかっこいい人とたまたま目が合うことなんてないでしょ....。



「どーしたの?未桜、ぼうっとして?」


「....ううん、なんでもないよ。行こっか」


心配そうにこちらを見る悠莉に、にこっと微笑み返す。


そして、私たちは、入学式が執り行われる体育館へと歩きだした。









一瞬だけ、目が合った気がした、あの瞳は。


綺麗で、魅力的で、なによりも....あたたかくて、やさしい瞳だった。