東さんが訊ねると、「取り引き相手です」と高級なグレーのスーツを着た谷口は答える。

「プライベートでも、共通の趣味だったゴルフを一緒に楽しむことがたまにありました。あのパーティーにいた人物の中で、私が一番彼と親しくしていたでしょう」

「倉本剛という名前を聞いたことは？」

あんなことになるなんて、と嘆く谷口に右京さんが訊ねる。

「い、いえ……。そんな名前、聞いたことありません……」

それからいくつか谷口に右京さんたちは質問をしたが、谷口の口からは西園寺虎徹が素晴らしい人間だということばかりだった。

「西園寺がそんないい人たちには見えないんだけどなぁ〜」

カフェから出た後、東さんが呟く。たしかに黒い噂はいろいろ聞く人物だ。

「経営者として素晴らしいと言いたいのではないですか？西園寺虎徹は、黒い噂はありますが経営者としては成功していますし」

私がそう言うと、「さすが蘭ちゃん！天才！」と東さんは私の頭を撫でる。子供扱いしてほしくない。