Violet Detective

東さんはそう言って私の背中を押す。そういうわけじゃないんだけど。

仕方なく豪華なごちそうが並べられたテーブルへ行く。近くには、朱美と右京さんが注意されたという使用人がいた。何やら小声で話している。

「……本当は倉本様もいらっしゃる予定だったのですか?」

「ええ、そうよ。でも死んでくれてよかったわ。イケメンに、社長に、プロ野球選手。おまけに外国人。華やかな席にあんなヤクザみたいな奴が来られたら困るもの」

倉本……。どこかで聞いたことある名前だ。

それにしても、死んだ人をそんな風に言うなんて……。私は信じられなかった。

聞いていたことがバレないように、二人を見ないようにする。そして、素早く皿の上にサラダを乗せて移動した。

時間だけが、刻々と過ぎていく。

虎徹の姿はまだない。右京さんの顔は不機嫌になり、つま先で地面を何度も叩く。誰が見ても怒っているとわかった。

その様子を見ていたのか、朱美が使用人に何か耳打ちをする。すると使用人はロナルドに話しかけ、パーティー会場を出て行った。