カーテンの隙間から眩しい朝の陽ざしが私の顔を照らして、目を起こさせられる。
まだ寝ていたい、という願望が私の体を布団に押し込むが、前日にセットした携帯の目覚ましアラームがそれを許してはくれなかった。



「・・・はようございます。」



鏡を見なくても分かるが、ほぼ100%の確率で私の胸くらいまで伸びた髪は鳥の巣のように、ぐちゃぐちゃにセットされていて、目をこすりながら、先ほどの第一声を口にした。

毎日起きたら朝のシャワーを浴びて、目を完全に覚ましてから、高校の制服を着て、身だしなみを整える。

朝ごはんは、大体いつもトーストで焼いたバターのせ食パンに、のむヨーグルトを体に流し込んでいる。


あ、両親は居ないのかって?


私の両親は仕事が忙しくて、家には居ないから、兄弟姉妹も居ないし、ほぼ一人暮らしだ。


・・・言っておくが、決して愛を受けて育ってないんだね?、みたいな可哀そうな子とは思わないでほしい。



何故なら・・・、



「・・・、10秒前。――・・・・3、2、1。」



チャンチャンチャララ~

手元に置いていた携帯のアプリ通話の音が鳴った。
毎日必ずこの時間帯に掛かってくるのだ。ビデオ通話で。

渋々、受話器ボタンを押す。

押した直後、第一声は私ではなく、画面の向こうの通話相手だった。



「もっしも~し、花ちゃ~ん?」


「・・・おはよう、母さん。」


そう、私の実の母だ。
携帯の画面いっぱいに、何とも整った顔が映されている。
私の母は、美人なのだ。そう、お世辞ではなく、とてつもなく美人なのだ。


「はぁ~、やっぱり花ちゃんはママ似ね~!今日も最っ高に可愛いわぁ~」


「ははは・・・、。」


朝っぱらから何言ってるんだ、この母は。なんて、もう思ったりもしない。
何故なら、これが毎日行われているものだからだ。


お父さんはどうなの?だって?

そんなの、数秒後に分かる。




チャンチャンチャララ~


ほら、きた。
もう一つの着信音は、皆さまお待ちかねのお父様。



「おはよ~。ママ~、そして可愛い可愛い、私の花ちゃん~。」


ちなみに、この通話はグループ通話で行っている。
そして、今更過ぎてツッコむ気も失せていたが、やはり言わせて頂きたい。

40近いおっさんが高校生の娘にデレデレな声出して、ちゃん呼びは、そろそろ辞めてほしい。
切実に。



そんなこんなで、私は、母と父と離れているが、ビデオ通話で顔を見せ合いながら話し合い、最終的には、私を目の前にして、二人でイチャつき合って終わる、なんとも言えない家族仲があるのだ。


ね?
全然可哀そうな子、じゃないでしょ?