二人が乗る横の列。
はやく最寄りに付けばいいのに、そう思った。



最寄りについて、電車から出ると鉢合わせしないように早歩きで階段を駆け下りた。


その時、あと2段というところで見事に足を踏み外した。



「っひゃ…いったぁ…」



膝から滲む血。
周りからの視線に顔がかあっと熱くなって泣きたくなる。
最悪だ。



そんなときに聞こえた声。




「ねぇ、大丈夫??」





優しいその声に顔を上げると、見たことのない男の子。
制服は同じだからきっと同じ学校の子。

声をかけられて少し放心状態のままで、はっと我にかえった私は勢い良く立ち上がった。




「大丈夫です!ほらこの通り!!」




なんて足をぶらぶらさせてみると




「っははっ!!はいはい分かったから大人しくする笑笑」




と笑われた。
まるで妹をあやすかのような口ぶりは、誰かさんにそっくりでまた胸を締め付けた。


また放心状態になっていると、視界に現れた大きな手が目の前でゆらゆらとゆれた。



「元気かと思ったら今度は暗くなるし…、大丈夫?」



それは私の顔を覗き込みながら手を降る男の子の手でまたはっとして我にかえる。


「すみません!大丈夫です!」

「ならよかった。」



「あ、あの名前…」


「あぁ、高城空汰です。
同じ高校だよね??俺は2年」



たかしろ くうた 先輩…



成り行きで一緒に登校することになって、学校まで歩きながらお互いのことを話した。


空汰先輩は1つ上でサッカー部
先輩は''空汰でいいし、タメでいい''と言ってくれたけど、一応先輩なので空汰先輩と呼ぶことにした。


「じゃ、またね柚乃」

「はい!空汰先輩、ありがとうございました!」


それからLinを交換して、空汰先輩はひらひら手を降って先輩の階に上がっていった。