その昔、大きな屋敷に美しい双子の姉妹がいた。二人の名前は桜という。姉の方は桜様、妹の方は小桜様と呼び分けられていた。二人は仲が良く、同じ物を好んだ。同じ物を食べ、同じ物で遊び、同じ着物を着て、同じ布団で寝て育った優しい父と優しい母。何もかもが幸せで、蝶よ花よと育てられた。ところが二人が6歳の時、母親が亡くなってしまった。悲しみに打ちひしがれる中、しばらく経つとこの双子の運命は恐ろしいものに変わった。運命を狂わす三人目の桜が登場したのだ。

三人目の桜は二人の遊び相手として引き取られた。表向きの理由としては…。 
二人の桜は彼女を歓迎した。彼女は二人よりも年上で、二人の母の様な存在だった…。二人は母をなくしたばかりだったからすぐに彼女に懐いた。
年上といっても3つばかり違うだけだったのだが…。二人はこの桜の事を桜子姉様と呼んだ。

さて、彼女は遊び相手として引き取られたが、真実はちがった。時代は彼女が5つの時に遡る。
当時彼女はとある村の庄屋の一人娘だった。彼女もそれなりの暮らしをしていたし、父や母に囲まれて幸せだった。   
ある時彼女の両親は大庄屋の家にお呼ばれをされた。彼女の母はその昔、大庄屋の親戚だった。当時の大庄屋が、彼女の父を気に入って彼女の母親を紹介し、結婚に至ったのだ。
ともかく彼女の両親は大庄屋にでかけて行った。それが彼女の運命を狂わせた。
先代の大庄屋はとても良い人物だった。
ところが息子の大庄屋は何も考えてないくせに悪知恵だけは働く悪人で、代官に収めるはずの年貢を使い果たしてしまった為、彼女の両親を呼びつけ、宴会を開き彼女の両親を帰したあと、年貢を盗まれた事にしようと思いついた。