✴  ✴  ✴


今はもう、花びらが散り緑の葉が生い茂る桜の樹。

千年以上前の星硝夜を乗り越えたこの樹は、ここに植えられた時からずっとこの町を見守ってきたはずだ。

人々の優しさ、笑顔、時には涙も。

そばに寄り添い続けてきたのだろう。

きっと僕のような、大切な人を亡くした人にも。

一年前から、時間は進んでも心だけは取り残されたまま。

「夜空…」

一体僕はどうすればよかったんだ。

一人、桜の樹の横で頭を抱える。


―――チリン


さっきと同じ鈴の音がして、顔を上げる。

今の音、法事のあときいたのとそっくりだ。

ふと、手に持っていた鈴が下に落ちているのに気づく。

「もしかして、この…?」

あの少女がくれた鈴が、不思議な音色を出すのか?