これまで、母も父も亡くしている僕は、もう傷つくことなどないと思っていた。

でも、そうではなかった。

幼い頃、初めてこの町に来たときも、高校生になって転校して戻ってきたときも、真っ先に僕の存在に気付き話しかけてくれたのは夜空だった。

いつの間にかいなくてはならない存在になっていた。

しかしもう遅い。

もっと早くそのことに気づいていれば。

人間、本当に大事なものは失ってみないとわからない。

日本の医療レベルは、世界でも認められるほど高い。

そんな国の医療で、どうしようもないのなら、僕にできることなんて何もない。