それからしばらくして、白衣を着た医者が部屋に入ってきた。

僕は、取り敢えず軽く会釈する。

医者は夜空の両親二人に、何かを話し始めた。

様子を見ていると、途中から二人とも涙ぐんでいて、夜空に何かあったことが明白だった。

医者が部屋から出ていってから、僕はどうすることもできずその場にいると、夜空のお母さんがこちらにやってきて、話してくれた。

その時言われたことは、今でもはっきりと憶えている。

「あのね、辛いかもしれないけどよく聞いてね。夜空、多分これが最期の夜になるだろうって…」

"最期の夜"。

その意味を理解するまで、どれほどの時間を要しただろうか。

「明日には、夜空はこの世にいない」

それは"死ぬ"ということ。