結局、諦めて帰ることにした。
待っていたせいで、まだ若干の明るさを残していた空は今やもう暗闇だ。
その暗さが、僕の心を表しているかのようで。
微妙な静けさが、更に不安を掻き立てた。
だが、段々と家に近づくに連れて人だかりやサイレンの音が聞こえるようになった。
人混みができていたのは、家の近くの大通り。
こんな夜に、何事だと思いつつも、やっぱり気になるので見ようとするが、人が集まりすぎて何があったのかわからない。
ふと、後ろから話し声が聞こえた。
「何があったの?」
「なんか事故があったらしいわよ」
「夏の夜なんて、冬より明るいし事故なんて起こりにくいはずなのにねぇ」
「そうねぇ」
「そうそう。事故に遭ったの、高校生らしいわよ」
その瞬間、背筋に嫌な汗が流れた。
それは三人で固まって見ているおばさんたちの会話だった。
何が起きたのか少しわかったものの、高校生という単語が胸に引っ掛かる。
だが、肝心の誰なのかが判らず気になって仕方がない。
