星空の下、ふたりの約束

声のした方へ行くと、桜の樹の下で小さな女の子がうずくまっていた。

いくら夏で日が長いとはいえ、この時間帯は流石に暗い。

こんな所に一人でいたら、母親も心配するだろう。

「ね、ねぇ。君、大丈夫?」

声を掛けるが、反応はない。ずっと下を向いて泣いている。

久々に人に話しかけるから、ちょっと小さすぎたのか?

「ねぇ。君、大丈夫?」

よし。さっきよりもはっきりと言ったから、聞こえているはず。

すると女の子は僕に気づいたようだ。

「お、お兄さん、だれ?」

顔を上げた女の子は、見た感じ5、6歳。

というか、いきなり知らない人に話しかけられたら驚くだろう。

「お兄さんは、この辺に住む高校生なんだけど。君はどうしてこんな所に一人でいるの?」

「えっとね、だいじなものをなくしちゃったの。」

そう言うと、また下を向いてしまった。

「何を失くしちゃったの?」

「えっとね、だいじな鈴をなくしちゃったの。わたしのすごくなかのいい友だちにね、もらったやつだったのに…」

なるほど、それでさっき鈴の音がしたのか。


――――――いや、でもこの辺で鳴った鈴の音が、あの自転車置き場まで聞こえるか?

普通に考えて、それはないだろう。だって少なくとも1キロ位はある。

じゃあやっぱり聞き間違いなのか?

でもここで悶々としていても、埒が明かない。

とりあえず今はこの子の鈴を探すか。

「こんな暗い中で一人で探しても、暗いし危ないからお兄さんも手伝うよ。」

その瞬間、女の子の顔が先程まで泣いていたことが嘘のように輝いた。

「ほんと⁉お兄さん、てつだってくれるの?」

「もちろん。」

「やったぁ!ありがとう!」

まだ若干、胸に引っ掛かることがあるが、それを無理矢理押し込んで、僕は探し始めた。