星空の下、ふたりの約束

しばらくすると、町の裏手にそびえる星海山の麓の光雲神社にたどり着いた。

この神社には、町唯一の桜の木が植えられている。

この場所以外に、桜が植えられている所は他にない。

なぜなら、この町には1000年に一度「星硝夜」
と言って星の欠片が雨に混じって空から降り注ぐ日がある。

人体への影響は無いものの、植物、特に桜の木に降り注ぐと急激な劣化、倒木の危険があるらしいからだ。

らしい、というのはこのことが言い伝えみたいなもので、信憑性があまりないからである。

まぁ、この話も夜空に聞かされたものだが。

そんなことより、結局さっき聞いたあの音は何だったんだ?

時計を見ると、既に20時を回っていた。

そろそろ帰るか。せっかくここまで来たのに面倒だけど、どうせすぐに帰る予定だったし。

別にいいか。

つい数分前に上がってきた階段を降り、近くに止めておいた自転車に乗る。

ペダルに力をかけようとしたその時だった。

子どもの泣き声がしたのは。