久々に来たアツのお家は、あの頃のままだった。



私用のスリッパがあって、玄関には嫌がるアツを無視して私が勝手に置いた二人の笑顔の写真立て。


私が持って来ていた化粧品や、ヘアスプレーもそのまま。



アツはこの部屋でどんな想いで過ごしていたんだろう?



私はアツとの思い出のあるものは、箱にしまって、クローゼットの奥に入れていたのに。




最後にこの部屋に来たのは、私がアツに別れを告げた時だった。



また来る事が出来るなんて、思ってなかったよ。




「はい。寒いだろ?飲めよ。」



湯気の上がる温かい紅茶をコツンとテーブルに置く。



ブタさんのペアのマグカップ。



「コレまだあったんだ?」



「使うのは1年ぶり。」



フゥーって冷ます息と、コクンと飲み込む音が静かに響く。


ものすごい緊張感が、お互いの間に流れる。




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