やっと私の家族から解放されたアツは、少々グッタリ。



「大丈夫?ごめんね?」



アツの背中を撫でながら顔を覗き込むと、



「お前、姫なのかよ?マジ笑いそうになったし。」



いつものちょっと意地悪なアツの笑顔。


言い返してやりたいけど、今日は聞き流してあげるよ。





「でも、大事にされてんだな?俺ちゃんと、お前の事大切にしないとな・・・」



嬉しい・・・


アツ・・・好き。



「いっかいだけ・・・」

アツの腕を掴んで、下から見上げる。


「ばか。お父さん帰ってくるだろ。」



いっかいだけ・・・。



アツは周りをキョロキョロ見渡して、



チュッ



軽いキスをして、私の頭をグシャって撫でてくれた。



「寒いからもう入れ。あっ何かバタバタだったから、お礼言えなかったし。ごちそう様って言っといて?」


「うん。今日、ありがとね。」




自転車で帰るアツの背中に、見えなくなるまで手を振った。




「おっコナミ、お父さん待っててくれたのか?」




ドッキーーンっ!!



後ろから聞こえるご機嫌な声。




「おっお父さんっ!おかえりなさい。」


「ただいま〜。寒かっただろ?さぁ入ろ〜。」



あっぶなぁーっ!!


正に危機一髪。




お父さんと一緒に家に入った私を見て、みんな目をまん丸くしている。



小さくOKサインを作ると、ホッとして肩の力を抜いた。




私とアツの交際は、まだまだ“親公認”ってわけじゃないけど、



ひとつずつクリアしていこう。



お父さんは、手強いけど、いつか必ず“大好きな彼氏だよ”って胸を張って紹介したい。



今は、私とアツがそうなれる様に、もっともっと、お互いの事を知って、二人でこの恋をもっともっと、大きく育てていくんだ。




毎日毎日、大きくなっていくこの気持ち。



本当に大切だから。



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