当然、それを不服だと思っている魔王からは髪の毛の隙間からぎろりとひと睨みされすぐに押し黙ったソルトであったが、内心では心底安堵したと胸を撫でおろしてしまう。
なんとなくであるがあの去り際に彼女のほうにも小さな変化は感じ取っていた。
それでもその後確かに記憶を取り戻したのかは確認は出来ず気がかりの一つであったのだ。
だからこそ魔王のこの報告はソルトからすれば朗報というべき物。
それでも魔王からすればどうにうも由々しき事態らしく。
「まったく、余計なことをしくさりやがって」
今もそんな風にぼやいてソルトに目を細めてくる始末。
なんでこんなに根を持たれているのか。
魔王からのジトっと刺さる視線に漫画であるならだらだらと大粒の冷や汗を流していたソルトであろう。
そんな収集のつかない事態をも百夜がまとめるしかないらしく。
それでも、百夜が次に放った、
「はあ。つまりは……またいつもの妹馬鹿な話か?」
なんて一言には
「……………はぁっ!!?」
と、さすがのソルトも声を荒げずにはいられなかったらしい。
まあ、それもそうだろう。
悪気はなくとも罪人である彼女を唆したらしいのだ。
それによって彼女が記憶を取り戻したということがどう都合が悪く影響するものなのかと真剣に思い悩み始めていたところであったのだから。



