「まったく、君たちはいちいち話を盛り上げない。全部聞いてそれでも黒だと思ったら騒ぎなさい。じゃないと話が進まないじゃないか」
「「……はい」」
「よろしい。……で?りっくんが彼女を誑かしたって話だが、つまりはりっくんが死にかけていた記憶に新しい数時間前の出来事の話でいいんだよな?」
「ああ、その時の話だ」
「ふむ。まあ、それ以外にりっくんが彼女に接する機会なんてある筈もないからねえ。でも、それが何で誑かしたなんて解釈に?あの場に迷い込んだものを導くのが彼女の罰で仕事なのだろう?確か、」
「その通り。あの虚無の空間でただひたすら他者の為だけに永劫に存在するのがあいつに課した罰」
「じゃあ、彼女とりっくんの接触だってその彼女の仕事の内だろう。何をそう目くじらを立てる必要がある?」
今までだって同じように導かれた者たちが数えきれないほどいるのだろう。
ソルトだってそのうちの一人にすぎない筈であるのだ。
なのに、どうしてか魔王はこうしてソルトに固執して不機嫌を向けていて。
百夜もいまいち理解ができないと小首を傾げ本人の返答を煽ってその顔を覗き込んでみる。
そうした沈黙を数秒。
「……導かれた」
「…へっ?」
「数百年かかってあいつから余計な記憶が消えていたってのに…」
「おい、話が見えないぞ?自己完結な説明じゃなく……」
「こいつが余計なお節介をしたせいで妹の記憶や自我が戻っちまったんだよっ!」
「そっか!良かったっ!!」
思わずだ。
魔王の告げた【彼女】の現状にソルトが歓喜の声をあげてしまったのは思わず。



