「こいつの居酒屋出没率は半端ないよ。しかも昔からあるような小さくてボロいけど味があるような店」
「そういう長くからの店のが仕入先も調理法も安定してるから美味いんだぞ。ああ、そう言えば最近駅裏の外れにいい店見つけたんだ。100年ぶりの再会だし飲み行くべ」
「お前の奢りならつきあってもいいぞ」
「よっしゃ、じゃあ時間は…」
「いやいやいや、ちょっと待てっ!何っ!?わざわざ魔王がお出ましって用事それっ!?単に旧友を酒飲みの誘いに来たのかよっ!?」
そんなフレンドリーな私用!?
だとしたら無駄に緊張したじゃねえかこのやろう!
と、ソルトの緊張感が完全にキレたのは一瞬の事。
次の瞬間には顔ごと向けられた魔王の意識に再びピンっと糸が張り直ってしまったのだ。
そうして振り向きざま揺れた髪の隙間からようやく捉えた魔王の金色の眼は印象的。
見つめられるだけで何故か自ずと閉口し沈黙しなければと思ってしまうのだから。
そうして静かになった空間に魔王が立ち上がる靴音が妙に鮮明に響き渡った後、細く骨張った指先が静かにソルトに向けられて。



