そりゃあそうだ。
単にヤバそうな根暗の不審者がいるくらいにしか警戒の度合いを広げていなかったのに、明確になったその詳細は受け入れの間口を大きく超えてきたのだから。
だからこそ実に感情素直な言葉が思わず口を突いて出てしまったわけなのだが。
「【こいつ】やら【死神】やら…、初対面で随分と無礼な奴だな。俺が魔王で何ぞ不服か?」
「あっ…その…、不服と言うより…驚いたってだけの話で………すみません」
「黒羽のマントなんぞを羽織り人骨で出来た玉座で人の生き血をグラスで揺らしていれば魔王っぽいのか?」
「ひ…ていは出来ないですけど、別にそんな事まで思ってたわけじゃ…」
「ふんっ、人間というのは相も変わらず魔族に対する印象がファンタジーすぎる。ゲームやら映画なんぞの誰かの創作印象に影響されすぎだ」
「それも…確かに。返す言葉もないです…」
否定しようにも確かにソルトの頭の中でも【魔王】と聞いてそんなイメージが浮かんだくらいだ。
この男が言うように無意識にも誰かの創造に影響され、そういうものなのだと思い込んでしまっていたわけだからして言葉に詰まるのも当然。
それでも男の方も決して声を荒げ憤慨したような様子で不満を述べたわけでもなく。
寧ろ、やれやれと面倒臭さが前面の不愉快を呟いた程度。



