当然、そんな胡散臭さを放った男の登場に友好的な態度に切り替えられる筈もないのだが。
それでも百夜ばかりはすぐに「あっ、」と声を漏らしてその警戒を緩めていくのだ。
勿論、百夜のそんな変化にソルトが気が付かない訳がない。
まだ男に警戒を置きつつ、チラリと百夜にも意識を走らせると、
「なんだ?お前の知り合いか?」
「あー…まあ、知り合いっちゃあ知り合いだねえ」
「俺はともかく、お前にまでまったく気配も察知させずにこの部屋に入り込んでたみてぇだけど?」
魔混じりで様々な感覚が発達しているといっても普通の人間よりかはという程度のもの。
相手によっては感知もできないなんてことはあるだろう事はソルトだって理解している。
それでも百夜は違う。
子供の姿に戻ってはいるが今は本来のすべての能力を取り戻した魔物であるのだ。
そんな百夜さえもこの男が声を発するまでその気配に気が付くことがなかったのだ。
と、なればこの男は百夜と同等かそれ以上の魔物だと推測される。
それでも、百夜は姿を確認するなりその警戒をといた。
つまりは殺気立って向かい合う必要はない相手なのだと百夜の対応から分かってはいるのだが。
とにかく、詳しい詳細を百夜の口から聞くまではと様子を伺っていた刹那に響いた返答といえば。
「まあ、そんなこともできるだろうさ魔王ともなれば」
「………へ?…ま、まお…」
「そ、こいつが全魔族を統べる王様だ」
「っ…こいつがっ!?この根暗でやる気なさそうなのが魔王!?魔王って言うより死神っぽいだろ!」
嘘だろっ!?という衝撃と驚愕はとてもソルトの内側だけでは処理しきれなかったらしい。



