その言葉と同時に、閉まり切ったはずの部屋に風が吹き荒れる。

目を開くことも困難な中、薄目を開けてみると、優ちゃんの体から眩しい光と春のように暖かい風が生まれていた。


 光に包まれた優ちゃんも驚きながら、スッと頭に手を伸ばした。

すると、その手に触れた漆黒の角は、砂のごとく風に乗って消えていく。


 優ちゃんはまるで、呪いが溶けた女神のように綺麗で美しかった。

今までついていた床から足が離れ、天上ギリギリまで浮上する。

「天使が、天国に帰ってきてもいいって。希衣のおかげだよ。本当にありがとう」


 待って、とは言えなかった。けれど、体が気持ちを表すように立ち上がり、必死で背伸びをする。

「ううん。お礼を言うのは私の方だよ。優ちゃん、私、優ちゃんに出会えてよかった。優ちゃんと友達になれてよかった。
優ちゃん……私に夢をくれて、ありがとう」