100年後も、君の代わりになんてなれない


「違うの。あたし、今生きて書くことができる希衣が羨ましくて、悔しくて。
希衣の夢が小説家だって気づく前は、自分の夢でもないのに作家になられるのが嫌だったし、希衣には自分の夢を持ってほしくて……それで……。
何度か希衣の応募した作品、落としたの」


 私はしばらくその言葉の意味を理解できずにいた。

落とした? だって優ちゃんは、言ってみれば幽霊だ。どうやって落とすことができるの?

ぐるぐると考えをめぐらせていると、優ちゃんは何か危ない物を扱うかのように、頭の黒い角を触った。

その様子を見て、先ほど私が椅子から落ちたことを思い出す。


「あたし、天国にいたの。そこで天使が、最近希衣が夢に向かって頑張ってるって言うから、気になって降りてきた。
でも、そんな汚い感情が生まれて……悪魔になっちゃったの。
悪魔は天国に帰れなくて、ずっと希衣の周りをウロウロしてた。
希衣が応募した出版社にも行った。そこで希衣の作品が高評価されているのを見て……また黒い気持ちが溢れてきて、角も伸びて。
そしたら希衣の作品、落とされちゃった……。何度も、何度も……」