「三神くんにだけ、こんなに胸が苦しくなる……」


言葉が零れ落ちて、腕の中の乃々花が2回、瞬きをする気配がした。


この感情の意味を、私もう知っている気がする。


三神くんだけ甘酸っぱいのも、切ないのも、苦しいのも、全部偶然なんかじゃない。


私の全てが、まるで花が芽吹くように反応するのだ。


そうして育って、心に根を張って。


ずっと前から、私は。


私はきっと。


「ねぇねはみかみくんがすきなんだね」


「…………」


「ねぇねいっつもみかみくんのことばっかり」


私はゆっくり腕を弛め、大きな水晶の目を見つめる。


澄んだ瞳に映った私が、知らない人のように思えた。


「私……」


どんな感情の名前よりも、どんな言葉よりも、それは心の中に入り込んだ。


まるで波紋のように、身体中に広がっていく。


ぱちぱちと弾けて、瑞々しくて、甘い衝動が指先にまで廻り、トクトクと心臓が鳴った。


頬に熱が灯る。


記憶の中で、三神くんが笑う。


あぁ。


私はこの笑顔を、何度でも見たいと思うのだ。


その隣にいたいと、願ってしまうのだ。


きっと今、


私は三神くんに恋をしている。


私は、三神くんのことが好きなんだ。