ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

和香ちゃんは手際よく指示を出しながら焼いているので、あまり食べられないんじゃなかろうかと思っていたら、篠宮くんが和香ちゃんの名前を呼ぶ。


「口開けろー」


篠宮くんが和香ちゃんの口元にお肉を持っていくと、和香ちゃんは器用ににぱくりと口に入れて、むふふ、と笑う。


「うま」


「これ俺が焼いた」


「嘘つけ私だよ」


唇を尖らせる篠宮くんは、まるで子供のようで。


色々あったけど、結果がこれなら三神くんを誘ってよかったと思う。


玉ねぎをしゃくしゃくと噛み砕きながら、私はほっと息をついた。


実のところ、三神くんを誘ったはいいけれど、嫌な思いをしたらどうしようとか、楽しくなかったら嫌だなとか、そういう可能性を否定できずにいた。


でも三神くんは笑っていて、篠宮くんや和香ちゃんも楽しそうで、ただの杞憂だったことを知る。


これからもっと、楽しいことがあればいい。


そしてそこに、当たり前のように三神くんが居て欲しい。


その一歩が、今日踏み出せた気がした。