ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

光石さんは戸惑った様子で三神くんを見る。


多分、不良だっていう三神くんのイメージと、実際の三神くんのギャップに感情が追いついていないんだろう。


私より三神くんの良くない噂を聞いているだろうから、無理もない。


光石さんは三神くんから目を逸らし、しばし迷った末に口を開いた。


「人参と玉ねぎでもいい?チーズもいるならあっちににあるから」


「……いいんですか?」


光石さんはこくり、と頷く。


「適当に取ってって」


そう言ってひらひらと手を振って、班員の元に戻っていく。


「ありがとう……!」


追いかけるようにその背に言葉を掛ければ、光石さんは小さな声で、


「三神って思ってたより単純だね」


「は?」


三神くんは思いっ切り顔を顰める。


噛み付こうにも、当の本人は目の前にいるはずもなく。


「なんだあいつ」


三神くんがぽつりと零した苛立ちに、私は苦笑してまぁまぁと宥める。


随分大きな進歩だと、三神くんは気付いていないのだ。


絡まって分かり合えないと思っていた誤解の糸が今、するすると解けた。


それだけで、今日の遠足には意味がある。


「褒め言葉ですよ、三神くん」


「いいんちょー頭大丈夫?」


「すぐそうやって人のことを……」


見上げるけれど、三神くんは反応することなくスタスタと次の班へ歩いていってしまう。


持て余した感情は飲み込むしかなくて、私は呆れ笑いながらその背中を追った。


こちらを振り向かないのは、多分きっと照れ隠しに違いない。