ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

「何を言ってるんですか。三神くんがいないと、私たち今日バーベキューの準備だけして帰ることになりますよ」


しがらみの全てをはらうように、大袈裟な心配だと笑い飛ばす。


三神くんは微かに目を見開いて、驚いた表情をした。


同時にヘーゼルの瞳と交わる。


もう、逸らさない。


三神くんの目は、次第に和らいで。


俯くと、小さく笑った。


「いいんちょー食い意地張りすぎ」


「……違いますが」


「はいはい。ハジメテなんでしょ、バーベキュー」


三神くんはそう言うと、すれ違いざまに私の持ったミニ保冷バックからお肉を奪う。


「ありがと」


呟かれた言葉は、心の中心を射抜く。


柔らかく温かな感情が弾けて、私は堪らなく愛おしい気持ちに包まれた。


傍に居られることが、嬉しい。


数年前なら、きっと考えられなかった。


私はぎゅう、と胸の辺りで拳を握る。


熱い。


胸の奥が、こんなにも熱い。


堪らず目蓋を閉じると、喧騒が耳に飛び込んでくる。


「安心しろ帆貴。怖がられたら俺が助けてやっから」


「……そもそもお前のミスじゃねぇの」


「そういうの蒸し返したらまずくなっちゃうだろ!」


「るせぇ。耳潰れる」


「ちょっと仁黙ってて」


「ひどい!」


隣に並べば騒ぎ出す彼らに、ガクッと力が抜けた。


仕方がない、と私は眉を下げて苦笑する。


どうせみんな、楽しいことが大好きで、黙ってなんか居られないんだ。


「誠意を見せないと譲って貰えないよ」


私はそう言いながら一歩踏み出して、寝癖が跳ねる後ろ姿を追った。


その横顔に、もう迷いはなかった。