ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

「……周りの奴らは俺のことよく思ってない。俺が行ったら逆に分けてもらえなくなるかもしれねぇだろ」


傷付きもしない、まるで諦めたような表情だった。


それが痛いくらいに胸に刺さる。


一瞬詰まった息に冷たい現実が迫って、私は言葉を呑み込んだ。


あの時と同じだ。


階段下で聞いた、2人の女子生徒の声が脳裏をよぎる。


あの時も、同じように悔しいと思った。


誤解されてしまう三神くんのことが。


ひとりになろうとする三神くんのことが。


何も出来ない、自分のことが。


三神くんはこうしてきっと、色んなことを諦めてきた。


簡単にあんな表情をさせてしまうくらいに。


三神くんは優しいから、自分が引けばいいと思っているのかもしれない。


いつか、古い記憶の中で友達が言った“自己犠牲”という言葉が、頭から離れてくれない。


立ち向かうより流されてしまう方が楽だと、三神くんは知ってしまっているんだ。


でも、と私は手を握りしめる。


本当にそれでいいんだろうか。


それを当たり前にしてはいけないんじゃないか。


誰かが、否定しないといけないんじゃないか。


その“誰か”を見逃してしまったら、私はきっと後悔する。


だからこそ、三神くんを遠足に誘ったんだ。


私は掌にぎゅっと力を入れる。