ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

「お皿と野菜とソース、多めにあるお肉と交換で他の班から少しずつ分けてもらおう」


和香ちゃんはそう言いながらぐっと腰を伸ばす。


「は?怒んないの?」


篠宮くんが顔を上げると、和香ちゃんは苦笑しながら口を開いた。


「仁は楽しみにしてた遠足でわざわざ怒られたいの?野菜が返ってくるわけでもないのに?」


「でも」


「仁、謝ったじゃん。怒る理由、ないし」


「……」


さっさと話を切り上げて、お肉を取り分け始めた和香ちゃんに対し、篠宮くんは気後れしたようにその場に留まっている。


「ほら、うちの班ただでさえ遅れてるんだから早く」


急かされた篠宮くんは和香ちゃんの隣に並んで、分けたお肉を備え付けのラップで包み始める。


そして小さな声で、


「……和香、ありがと」


「別に。通常運転でしょ」


和香ちゃんはそう言って、まるで晴れた空みたいな笑顔を見せた。


「手伝うわ」


三神くんも篠宮くんの肩を叩いて、作業を進めてくれる。


良かった、と隣に並びながら、私は胸を撫で下ろした。


和香ちゃんは無闇に周囲に当たる人ではないし、篠宮くんも開き直るほどの強心臓を持ち合わせていないはず。


大喧嘩にはならないだろうと思っていたけれど、せっかくのバーベキューが微妙な空気というのも忍びない。


上手くまとまってくれたおかげで、何とか解決できそうだ。


今までもこうしてふたりは補い合ってきたんだろう。


想像すると、そんな人たちと友達になれたことが誇らしかった。


「私、やっぱりふたりと友達になれてよかったです」


そう言うと、篠宮くんが心配そうに、


「こんな風に買ってきたちょっといい肉をラップで包む羽目になっても?」


と、上目遣いで聞くものだから、私も和香ちゃんも三神くんも肩を震わせて笑ってしまった。


なんだかんだ中心にいてくれる篠宮くんのことが、私たちは結局憎めないのだ。