ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

逆にだんだんと火が安定してきたかまど係は、もうお肉を焼いてしまいたいのか、テーブルの方へとやってきた。


あちぃ、と顔を顰める2人の首筋を、濡れた汗が滑る。


「肉、まだ?」


三神くんは風を送るためのうちわでバタバタ扇ぎながら、私の手元を覗き込む。


その時にテーブルについた手が近くて、また心臓が大きな音を立てた。


「えぇと、あと少し……」


「ふーん。腹減った」


三神くんはそう言いながら、近くにあった椅子に足を広げて座る。


ふと、前にも同じようなことを言っていたなと、私は記憶を辿った。


あの時は確か、唐揚げが食べたいと言っていたんだっけ。


私はくすくすと笑い声を漏らす。


「それは三神くんが食いしん坊だから」


「……やめろそれ」


「今日の雲は唐揚げっぽくないですね」


「馬鹿にしてんだろ」


「してませんよ」


にやつく口元を必死で隠すけれど、三神くんはジト目のままだ。


まるで動物が威嚇するように、手元のうちわでバンバンと音を立てる。


バスの中はあんなに大人しかったのに。


荒れた気配を背中に感じながら、私は苦笑いを浮かべた。


でも。


心の中にふつ、と湧き上がる。


私、今普通に話せてる。


まだ緊張はしてしまうけれど、ちゃんといつもみたいにいられてる。


そのことに、私は小さく安堵の息を漏らした。


このままずっと、この調子でいられたらいいのに。


まだ、届かなくていい。


まだ、このままでいたい。


そんなことを考えて、何が、と首を捻った瞬間──


「集合」


保冷バッグの中を探っていた和香ちゃんが、強ばった声で私たちを呼んだ。