ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

三神くんと2人きりになるのは、あの日屋上で話した以来だった。


その後は勉強会も終わってしまったし、休み時間も遠足の準備で誰かしらが傍にいたから、三神くんと他愛もない話をするのは久しぶりだ。


そう思うと、急に2人きりを意識してしまって、何を話せばいいのか分からなくなる。


私、いつも何を話してた?


どんな顔で、三神くんと過ごしてたんだっけ。


記憶を辿れば、あの低く囁かれた声を思い出してしまって、顔に熱が集まった。


慌てて頭を振って、両手で頬を押さえる。


「調子が狂う……」


「何が?」


「へ?」


「なんの調子が狂うって?」


三神くんが尋ねる。


幾分か良くなったのか、唇の色が戻ってきていた。


「いや、あの、こっちの話だから大丈夫」


そう言ってわたわた手を振るけれど、絶対に挙動不審だ。


変なやつって思われたかもしれない。


急に自分の一挙一動が気になってしまって、私はとにかく間を持たせようと考えた。


話題が見つかれば、あとは流れに任せてしまえばいい。


ちらちらと辺りを見渡して、ふと、三神くんの左耳に光るピアスに惹き付けられる。


「……そのピアス、空ける時痛くなかった?」