ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)




バスから降り立つと、緑豊かな香りが鼻の奥に広がる。


太陽は照っているものの、山の麓付近に位置しているために、気温もさほど高くない。


爽やかで気持ちの良い気候だ。


駐車場から少し登ったところには大きなゲートがあって、そこが施設の入口になっている。


中には、アスレチックやバーベキュー施設、宿泊場所が十分な広さを保って建てられていた。


私はバスの中で凝り固まった体を伸ばすと、後ろを振り返る。


「三神くん、大丈夫?」


「……ん」


いつもより元気のない様子で降りてきた三神くんは、外の眩しさに目を細める。


何回か深呼吸をして、気分を紛らわせているみたいだ。


後ろから続いて降りてきた篠宮くんと和香ちゃんは、三神くんと三神くんの面倒を見る私の荷物を持ってくれている。


「未琴、ゲートの端で点呼だって」


「うん。でもちょっと三神くんがしんどそうかも」


「2人でゆっくり来たら?学年主任には私が言っとくから。荷物も持ってっとくよ」


「ありがとう」


篠宮くんと並んで点呼へ向かう和香ちゃんを見送って、私は三神くんに向き直る。


「ゆっくり行きましょう」


そう言って笑えば、帽子の影になった三神くんの目元が、少し優しくなった気がした。