ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

「篠宮くんは勉強させられたことじゃなくて、志谷先生に嘘をつかれたことが嫌だったんじゃないですか?」


「え?」


「さっきから話を聞いていると、篠宮くん別に勉強したことに後悔はしてないでしょ?志谷先生にばっかり攻撃してるから、志谷先生に裏切られたみたいで嫌だったんじゃないかと思って」


そう言うと、篠宮くんは豆鉄砲を食らったような表情になって、ぐりん、と首を捻った。


「そっ……ンナコトナイ……と思う……?」


「知るか。私に聞くな」


和香ちゃんが一刀両断して、篠宮くんが黙り込む。


たぶん、当たり。


私は座席の背もたれに隠れてくすくすと笑う。


篠宮くんは三神くんと違うタイプの素直さを持っている。


純粋無垢に近いその真っ直ぐさは、篠宮くんのいいところだ。


ひょんなことから訪れた平穏に、和香ちゃんがやっと息をつく。


「未琴、バーベキューはちゃんと楽しもうね。何があってもあのバカは放っておこう」


そう言うけれど、きっと和香ちゃんは世話を焼くんだろう。


私は曖昧に笑って、和香ちゃんからイヤフォンを受け取る。


その時、寝ていたはずの三神くんがぼそり。


「気持ち悪」


「は?」


和香ちゃんが勢いよく三神くんを振り返る。


三神くんは顔から帽子をずらして──その顔が以上に白い。


「バス酔いした……吐きそう……」


「吐きそう!?」


私は慌ててリュックからビニール袋を取り出すと、三神くんの手に握らせる。


「袋がファンシーすぎて無理……」


「これしかないから文句言わないでください!」


「確かにゲロまみれのキ〇ィちゃんは見たくないな」


「仁は伏字にしない!」


つかの間の平穏は騒動に早替わり。


結局、目的地に着くまで私たち一行はてんやわんや、バスの中は大騒ぎだった。