群青の空には、星が瞬き始めていた。


私も三神くんに倣って、コンクリートの床に寝転んでみる。


ここが立ち入り禁止の屋上だとか、制服が汚れてしまうとか、そういうことを一回全部忘れてしまったら、なんだか三神くんと同じ世界が見える気がした。


ちらりと三神くんの横顔を盗み見ると、心臓がどきりと高鳴る。


背中にあたるコンクリートの冷たさが、一瞬で増した。


「三神くん」


「なんですか」


「帰りにアイスを買ってもいい?」


「なに、急に」


「少し熱くて……」


体が火照る。


じゅわり、体の奥底から感情が溢れるような。


「まだ5月だけど」


「奢るよ」


「パーゲンダッツで」


「ここぞとばかりに……っ」


この気持ちの名前を、私はまだ知らない。


芽吹いたばかりの感情は、誰に知られることもなく私の中で眠っている。


アイスクリームはたぶん、私の熱を攫いはしない。


けれどきっと、世界中のどんなものより、甘い味がするのだろう。