ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

5月の、まだ少し肌寒さを残した風が頬を撫でた。


屋上は街が一望できて、小さな箱が並んだような街並みの先には、沈みかけの太陽が眩しく煌めいていた。


「綺麗……」


「俺の特等席」


三神くんは口角をきゅっと上げて笑う。


「あ、いいんちょーあの雲唐揚げみたいじゃね?」


「唐揚げ?」


目を凝らして三神くんが指さす方向を見つめるけれど、どの雲も唐揚げには見えない。


食べ物で頭がいっぱいの人にしか見えない魔法でもかかっているのだろうか。


「唐揚げ食いてぇ」


言いつつ、三神くんはその場でゴロンと寝転がる。


気持ちよさそうに目を細める姿は、まるで猫みたいだ。


私は小さく微笑むと、三神くんの横で体育座りをした。


「やっぱりお腹空いてるのね」


「成長期なんで。いいんちょー腹空かねぇの?」


「昼ご飯食べたからね」


「俺だって食ったわ」


「……食いしん坊」


「言い方」


「可愛いじゃないですか」


くすくす笑うと、三神くんの嫌そうな視線が飛んでくる。


けれど直ぐに三神くんは真面目な顔になって、いいんちょー、と呼びかけた。


「どうしましたか?」


三神くんの顔を見つめれば、


「ごめん」