ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

翌朝、学校を休むわけにもいかず、気後れしたまま登校すると、よりによって下駄箱で三神くんに遭遇してしまった。


こういうのは普通時間を置いてゆっくり雪解けを待つんじゃないのか、と少し神様を恨む。


「お、はよう、三神くん」


心の準備ができていなかったから、たどたどしい挨拶になってしまって、余計に心臓が跳ねた。


不審がられてしまったかもしれない、と内心頭を抱える。


「……うす」


三神くんは小さく挨拶を返し、軽く頭を下げた。


「いいんちょー、あのさ」


「そういえば!今日から体育個人種目だね。三神くんは何選択した?」


三神くんが昨日のことを話す気配がして、私は慌てて話題を変える。


まだ、真っ直ぐに向き合える自信なんてない。


もし言ったことを消せる消しゴムがあるのなら、私は昨日を消してしまいたい。


でもそんなもの手には入らないから。


あと少しだけ時間が欲しいと願ってしまうのは我儘だろうか。


「……水泳」


三神くんが諦めたように答える。


「水泳かぁ。私、水泳って全然ダメでね。地上でやる競技なら人並みに出来ると思うんだけど──」


他愛ない話しかできない私の隣を、三神くんは黙って歩いていた。


影ですらも重ならない距離が、私は無性に寂しかった。