ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

廊下に出ると、プリントを大量に抱えた篠宮くんに出会った。


後ろには志谷先生もいる。


「あれ、いいんちょーもう帰るん?帆貴は……って、なんで泣いてんの」


篠宮くんが驚いたように目を見開く。


「……帆貴がなんかした?」


篠宮くんは時々、妙に目敏いところがあった。


周りを見ていないようで気にしていて、誰かの変化によく気付く。


言い当てられた私は一瞬言葉に詰まるけれど、これでは三神くんが悪者だ。


私が勝手に傷付いたことを、三神くんのせいにはできない。


「違うよ、花粉症。1年前はそうでもなかったんだけど、最近涙が止まらなくて」


「え、まじ?いいんちょー大丈夫?」


笑ってみせると、篠宮くんは慌てて心配してくれる。


白々しい演技をすっかり信じ込んだ篠宮くんに、私は罪悪感が湧き上がった。


嘘ばかりついて塗り固めた本当の私を知ったら、きっとみんな失望する。


「……ごめんなさい」


「え、なに?」


「用事思い出しちゃったから、先帰るね」


さようなら、と頭を下げると、篠宮くんが明るく手を振った。


「いいんちょーまたね」


「明日“花粉症”で目腫らしてくるとか勘弁しろよ」


言い添えた志谷先生には、多分バレてるんだろうな。


2人の姿を背に、ぼんやりそんなことを思うと自嘲の溜息が漏れて、虚しさが喉に詰まった。