「三神くん、また問題集出してないでしょう」


私がそう言うと、三神くんはいつも「それって出さなきゃいけねぇの」と気怠げに聞き返す。


柔らかそうなマッシュショートの髪が少し跳ねているのはご愛嬌だ。


ズボンから少しはみ出たカッターシャツ。


幾つも空いたのピアスの穴。


いわゆる不良の三神くんは、校則を守ったことがない。


たぶん、登校してからずっと寝ていたんだろう。


透き通るを通り越して、不健康そうな肌にはノートの跡がくっきりと浮かんでいる。


「ゴールデンウィークの課題、今日の13時までだよ。志谷先生が職員室前のカゴに出しておいてって」


「ふーん」


言いつつ、三神くんの頭は机の上の腕の中にポスリと埋まってしまう。


……先生から全員分回収してこいって言われてるんだけどなぁ。


私は回収した分のノートを抱え直すと、三神くんの机の前で眉を下げた。


「三神くん」


「……はい」


三神くんは突っ伏したまま私の手に何かを握らせる。


「……これはゴミです。私は問題集を回収しに来てるの」


「……」


「三神くん」


「……うるせぇ」