ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

ふわふわのわたあめをふたりで分けた。


狐のお面を被って、小さくはにかんだ。


ヨーヨーを落として跳ねた水に顔を顰めて、慧くんが笑った。


火照るような熱の中を、並んで歩いた。


冷たいラムネの温度だけが、鮮明だった。


私はきっと、一生分の夏を過ごしているのだと思った。


もう二度と、こんな日は来ない。


私の日常はまた同じように巡ってくる。


慧くんがこの手を離した瞬間から、私は日常に戻ってしまうのだ。


けれど、慧くんは言った。


『来年の夏も、未琴が未琴でいられたらいい』


高かった陽も傾き、夜がもう始まろうとしていた。


杏と白藍の色が混じり合い、頭上にはささやかな星が瞬く。


誰もいない帰り道に、慧くんの穏やかな声が響いた。


『これからずっと、未琴の人生も俺の人生も続いて行くんだ。今日だけなんて言わなくてもいい』


横を歩く慧くんは、最近ぐっと身長が伸びたような気がする。


同じような目線だったのが、今は少し見上げなければ表情が見えない。


そっと顎を持ち上げて窺ったら、慧くんと視線が交わった。