でも、意外にも慧くんは決して首を縦に振らなかった。
『山崎さん、矢野くんと別れたばっかりだよね。俺は矢野くんの代わりはできない』
『そうだけど……西宮、彼女いないんでしょ?じゃあいいじゃん』
『彼女はいない。けど、山崎さんとも踊れない』
普段、頼みごとを快く聞き入れてくれる彼が、自分だけの頼みを断る。
引き下がれない彼女は、唇をかみ締め、目に涙を浮かべた。
『あたしのことは嫌いってこと?』
それを見た彼女の3人の友人は、誤った正義感で慧くんを批難した。
諍いはどんどんヒートアップしていく。
そのうちの誰が手を上げたのかは分からない。
細い手が力いっぱい慧くんの頬を叩いた。
慧くんが体育館裏で喧嘩をしているらしいと私が教室で耳にしたのはちょうどその頃だった。
私は慌てて立ち上がり、スカートを翻してそこへ走った。
ぼろぼろと涙をこぼす山崎さんと、それを慰める友達、それから見たこともないほど強ばった顔をしている慧くんをみとめると、私は弾む息を抑えながら足を止めた。
『一緒に踊るだけじゃん!西宮のバカ!』
鋭い声が空気を切る。
左頬を張られ、切れた唇に血が滲む慧くんは、それでもきっぱり言い切った。
『好きな子がいるから、できない』と。
『山崎さん、矢野くんと別れたばっかりだよね。俺は矢野くんの代わりはできない』
『そうだけど……西宮、彼女いないんでしょ?じゃあいいじゃん』
『彼女はいない。けど、山崎さんとも踊れない』
普段、頼みごとを快く聞き入れてくれる彼が、自分だけの頼みを断る。
引き下がれない彼女は、唇をかみ締め、目に涙を浮かべた。
『あたしのことは嫌いってこと?』
それを見た彼女の3人の友人は、誤った正義感で慧くんを批難した。
諍いはどんどんヒートアップしていく。
そのうちの誰が手を上げたのかは分からない。
細い手が力いっぱい慧くんの頬を叩いた。
慧くんが体育館裏で喧嘩をしているらしいと私が教室で耳にしたのはちょうどその頃だった。
私は慌てて立ち上がり、スカートを翻してそこへ走った。
ぼろぼろと涙をこぼす山崎さんと、それを慰める友達、それから見たこともないほど強ばった顔をしている慧くんをみとめると、私は弾む息を抑えながら足を止めた。
『一緒に踊るだけじゃん!西宮のバカ!』
鋭い声が空気を切る。
左頬を張られ、切れた唇に血が滲む慧くんは、それでもきっぱり言い切った。
『好きな子がいるから、できない』と。



