ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

「……かき氷、食べませんか?ほら、三神くんの手の近く、溶け始めてる」


少しでも空気を軽くしたくて、私は三神くんの顔を覗き込んだ。


せっかくのかき氷だ。


ドロドロになってしまう前に堪能しなければもったいない。


考えても仕方のないことは置いておいて、この瞬間を楽しむが吉だ。


私はストローのスプーンで氷の山を崩し、シロップをたっぷりと含んだ雪を口に運ぶ。


氷の痺れるような冷たさとともに、甘酸っぱいあんずの風味が口の中に広がって、私は思わずカップを持っていない方の手で口元を押えた。


「美味しい……これ、当たりですよ三神くん……!」


爽やかな香りはまるで夏そのもののようで、三神くんに感動を共有したくなる。


心を動かされるどんなことも、三神くんとならもっと色鮮やかになることを私は知っていた。


そっと、三神くんを窺う。


三神くんは目が合うと観念したように微かに笑った。


そして大きな手をストローを持つ私の右手に伸ばし、ぐっと引き寄せる。


「あっ!」


「うま」


近くなった端正な顔が離れていく。


少し低い体温が触れたのは一瞬で、それでも重なった指先からぶわりと熱が広がった。