ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

かき氷がやって来るまでの間、三神くんと他愛もないことを話す。


かき氷はちょうど氷の交換で、もう少しかかるみたいだった。


その時、三神くんの携帯が鳴った。


三神くんはパタパタとシャツで空気を送りながら、携帯のディスプレイを確認し、またポケットに押し込む。


「いいの?電話、出なくて」


三神くんの携帯は鳴り止むことなく、ずっと低いバイブレーションを続けている。


「……いい」


かき氷屋の暖簾の影が、三神くんの顔に落ちた。


頑なな声の理由は、私に気を遣っているというより、電話の相手にあるような気がした。


一体、誰なんだろう。


これほどまでに固く、険しい三神くんの表情を私は今まで1度も見たことがなかった。


誰が、三神くんの顔を曇らせるのか。


踏み入れてはいけない壁が、そこにあった。


着信が切れる。


喧騒が私と三神くんの間に戻る。


そして、三神くんが出るまで呼び続けるように、再び携帯が鳴った。


「……ごめん」


三神くんはそう言い置いて、列を離れる。


「もしもし」


いつもより少し、低い声。


何を話しているのかは分からないけれど、三神くんはずっと「大丈夫だから」と口にしていた。