ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)

ジュースを飲んでいた三神くんは、なんとなく残されてしまった私をちらりと見遣り、口を開く。


「くそ真面目」


「くそって……」


「篠宮埋めんの可哀想とか思ってんでしょ。あれ本人意外と乗り気だから」


「……本当?」


「本当に嫌なことならあいつ顔に出るから」


三神くんはそう言うと、飲み終わったジュースのパックを握り潰しながら立ち上がる。


それが大きな影になって、私の小さな体を覆い隠す。


「そういうくそ真面目なところ、俺は好きだけど」


三神くんはぽつ、と、言葉をそこに置くように呟いた。


三神くんの顔は逆光でよく見えない。


どんな表情で、どんな気持ちでいるのか、分からない。


知りたい。


でも、まだ、聞けない。


「いいんちょー」


三神くんはさっきのが何でもなかったように私を呼ぶ。


「……その好きは、どんな好きですか」


小さく零れた声は、波の音に攫われて三神くんには届かない。


それでいいような、そうじゃないような、二律背反する気持ちが心を揺らす。


「なに?聞こえなかった」


「ううん……どうしたのって言っただけです」


私はそっと目を細め、三神くんと同じようになんでもないふりで答える。


あと少し勇気が出るまで、三神くんは待ってくれるだろうか。


「篠宮埋めないなら、かき氷、食いに行かね」


三神くんが笑う。


私はこくり、と首を振る。


今は、まだ。


そう思ってはいても、跳ねる心だけは言うことを聞いてくれない。